私は祖母がなくなった後、生まれ育った故郷でもある、東京へ出て行きました。
それまでも家を出ている時期は長かったのですが・・・東京に出た時は感覚は違いました。

東京での私は、とてつもない自由感と希望に溢れていました...
友達や知り合いは全くいない、知らない人だらけ、
道行く人達は私の事なんて見向きもしない...

普通なら寂しくなる所ですが、それは私にはものすごく楽で、
だから自由な感じがしてウキウキするくらいで、
東京では、今までずっと感じていた「拘束感」のようなものは消えていました。


私が東京へ出てから数年後...
アタシは帰省した時には、よく祖父と話すようになっていた時期がありました。
アタシが東京へ行ってしまってからは、祖父との間にも距離が出来た為、
それが逆によく作用して、お互いが話せるようになったんだと思います。

そして、その頃は不思議と祖父がとても優しくなっていた。

勿論、そうは言っても、そういう性格の祖父ですから、
話が合うわけではないし、なんとなくぎくしゃくして、気まずい感じもありましたが。
でも、「おじいちゃん、聞いてよ、あのねーアタシ東京でね、歌手やってるんだよ」等と話して
当時自主制作のＣＤ（ロックｗｗｗ）を聞かせたりしてました(笑)

それでも、あの祖父が黙ってそういう話や音楽を聞いてくれて、否定もせず
「みらいよ、どんな事でも一生懸命やるのはいいことだ。
それでお金を貰うっていうのも大変なんだよ、わかるか？」
なんて話したりしてた事は、私にとって驚異でした。

ある日、祖父が私と酒を飲んでいた時、ふと私に呟いていた事があります。
「みらいよ・・・おじいちゃんはな、
　家族の為に今まで一生懸命、汗水たらして働いてきたんだよ。
　お前達や家族の事だけ思ってな・・・一心不乱に働いてきたんだよ...」
と。

その時は何故か、あの頑固で粗暴だった祖父がとても寂しそうに見えて、
私も涙が出そうな感情が湧いたのを覚えています。

それから私が東京に戻ってからしばらくして・・・
祖父は脳梗塞で倒れました。



...祖父の時代は「一家長制度」という時代であり、
当時、そんな祖父の姿勢は正しく尊敬されていました。

今の「草食系」なんて世代には到底理解出来ないものであり、
私自身でさえも「祖父は悪者」としか思えなかった。

結局、その「時代の価値観のズレ」が、
私と祖父との確執を作っていたんだと今のアタシは思います。

実際、今の私は「一家長制度的考え方」や「男尊女卑思想」に対し、
極端に拒否反応する部分があります。

...そう思うと、私は祖父自身に逆らっていたのではなく、
もしかしたら、古い風習である「一家長制度」を引きずる家系の在り方、
そして「男尊女卑思想」に対して、身体を張って訴えて
反抗していたのかもしれないとも思います。

・・・今の時代は、今の時代の在り方があります・・・。

古い観念を持つ大人が「今の若者は」等と言いますが、
彼らは今の時代に添った生き方をしているに過ぎないと思います。

逆に、そういった古い意識を持って、若者に「それは違う」と
頭ごなしに言う大人の方が、今の時代では間違っている事だってあります。

その時代では「正解」だったけど、今の時代で同じ事をしても、
うまくいかなかったり、裏目に出てしまう事だっていっぱいあるのです。

今の私は大いに思います。

古い観念の大人は、逆に若者に今の時代の在り方や生き方を学ぶべき。

大人だって、時代遅れの価値感を脱ぎ捨てた方が、
楽になれたり、うまく行く事だってあるのですから。
時代の流れと共に「価値観」は常に移り変わっていき、
その時代での正解も全て違うのは当然です。

そうじゃないと人間は進化しませんから。。。

[続く]

---

祖父の事 |No.1|No.2|No.3|No.4|No.5|No.6|No.7|